らくだはお気楽
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071:鉄 より

感傷と私をむすぶ鉄道に冬のあなたが身を横たえる
笹井宏之 (【温帯空虚】)

 美しい物語みたい。
 先ず一番に思ったのはなぜ「冬」なのか、ということ。
 「感傷」といえば秋思、と単純に思い浮かべてしまったが、「冬のあなた」を越えて行く先は春というのが自然だから春愁か。
 「冬のあなた」を越えて行かない限り「私」は永遠に冬から出られない。「冬のあなた」は確信犯なのだ。春の愁いに行きつく鉄道に乗ると「冬のあなた」を轢いて行くことになる。「私」は「感傷」にたどり着きたいのだろうか?
 いったいに、「あなた」を踏みしだいて行くから「感傷」なのではないのか?原因と結果が逆の、だまし絵のような錯覚を覚える。

 何度も読み返すうち、別の物語が立ち上がってきた。
 「私」は「感傷」を目指しているのだが「冬のあなた」がそれを身を持って阻止しようとしているのだ。「冬のあなた」は「私」が「感傷」へ向かってはいけないと思っている。
 そして、「私」にとって「冬のあなた」を轢いて行くことなど有り得ない。
 
 更に読み返すうち、すべての物語が消えて、鉄道を静かに覆っていく雪が見えてきた。
 雪がすべてを覆い隠して真っ白にしていく。「感傷と私をむすぶ鉄道」ももう見えない。
 雪景色の歌、と言ってしまえば身も蓋もないが、雪景色をこんな風に詠める人もそうそういないと思う。
 雪だから「冬」でなくてはならなかったんだなぁと納得した。
 
 たった三十一文字の詩のちからを、たっぷり堪能した。

以下、お気楽選歌
作者名(作者ブログ名) 敬称略


西中眞二郎 (しなやかに、したたかに、無責任に・・・西中眞二郎雑記帳)
地下鉄の通路を行けば天井のことさら低く思われる朝

坂本樹 (ひこうき雲)
風たちが告げることばに気づいたらこの鉄橋をわたっておいで

振戸りく (夢のまた夢)
コンビニのサプリメントで採る鉄も意外とバカにならないのです

小籠良夜 (《冥の逸脱》)
くれなゐの恋に焦がれし創造の想ひの果ての鋼鉄の処女

ワンコ山田 (歩道を走る自転車のこども)
伸びた背で残りの夏を押して蹴る一番高い鉄棒はしなって

小早川忠義 (ただよし)
この先を越えむと常に思はしむ鉄条網の結び目の美し

月原真幸 (さ か む け の ゆ び き り 。)
巻きつけた有刺鉄線(まもろうとしたはずなのになぜ)傷つくの

遠藤しなもん (忘れちゃった。)
鉄棒の呪いだろうか グルグルと同じ所をまわってるのは

近藤かすみ (気まぐれ徒然かすみ草)
朝まだき少し覚めゐてまた眠るわれに足りぬは鉄分のみか

遠山那由 (百億粒の灰の鳴る空)
遊具らは錆びつつ黙す 工員の声が聞こえぬ製鉄所跡

空色ぴりか (題詠100首2007/空色ぴりか)
地下鉄を降りたホームで立ちつくす私やっぱり行かないでおく

平岡ゆめ (le petit cahier)
鉄瓶に祖母は薬湯煎じおり生まれたからには死なねばならず

2010/09/19  | trackback(0) | comment(0)


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