らくだはお気楽
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077:狂 より

其はまるで恋にも似たり吾が胸の触れ得ぬ箇所へ点る狂気は
水風抱月 (朧月夜に風の吹く。)

 主体は、冷静に「吾が胸の触れ得ぬ箇所へ点る狂気」を見ている。今現在狂っているとは思えないが、いつ狂ってしまうか分からない、狂気の発芽を見ている。
 狂ってしまったらもう理性は通用しない、そこら辺が「恋にも似たり」と言えるだろうか。

 誰しも、何かを強く請い願い、でも叶えられない、ということはあるわけで、でも誰もが狂気を身内に点すとは限らなくて。
 狂気に至る境目って何処なんだろう。その、一歩を踏み越えてしまうからこその狂気。

 一読した時は、恋の果てが狂気では?と思った。たとえば六条御息所。その場合は、恋に似ているのではなく、もともと恋だったもの。
 この歌の場合は恋情の果てではないようだ。でも、何に対する狂気かは多分どうでもいい。
 主眼は「狂気」そのものなのだと思う。

以下、お気楽選歌
作者名(作者ブログ名) 敬称略


紫苑 (紫苑がさね)
狂ほしき嵐の去りて天井の白きを空のごとくに眺む

tafots (許せないなら許さなくていい)
端末の時計がいつも狂ってて世界と同期するのに必死

酒井景二朗 (F.S.D.)
恨めしき身勝手者を忘れむと狂氣をラムに溶かす夜なり

南葦太 (「謙虚」という字を書けぬほど)
まだ君の夏の帽子は出っぱなし壁の時計は狂いっぱなし

佐藤紀子 (encantada)
音程の狂ふところも(味)となるほろ酔ひ加減のあなたの歌は

伊倉ほたる (ほたるノオト)
呆気なくリズムは狂うひとつだけ指を滑らす黒鍵がある

雑食 (題未定)
狂気とはきみのベッドの傍らに積み上げられているコンドーム

黒崎聡美 (ゆびおり短歌)
少しずつ狂う時計をそのままに(きづき、わすれて)晩秋となる

奈良絵里子 (詠んだこと)
古い絵と狂歌の載った折り紙の本を大事に携えたひと

ひぐらしひなつ (エデンの廃園)
何度目の冬か訃報の重なりて鳩時計の鳩しずかに狂う

萱野芙蓉 (Willow Pillow ?)
酔狂な生き物でした、貧相なわたしの胸で眠りたがつて

みち。 (銀塩プロローグ。)
狂ってもまた直される安物の時計みたいにがちゃがちゃされて

生田亜々子 (屏風と靴)
狂人でもういいのですもうすでに世界は液晶越しなのだから

2013/04/03  | trackback(0) | comment(0)


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