お気楽堂本舗
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092:烈 より

category: ・ 2010 題詠選り好み
烈しさを見送り秋の机には白紙のままの手紙がのこる
ひぐらしひなつ (エデンの廃園)

 夏の「烈しさを見送り」迎えた秋、この時点では、まだ穏やかとはいえない気がする。
 「白紙のままの手紙」とは「烈しさ」の後の空虚を表しているのだと思う。
 「手紙がのこる」ということは、秋になって書こうとしたものではなく、まだ「烈しさ」(=夏)の中にいる時に書こうとして書かないまま、あるいは書けないまま、終わりが来てしまったのだ。
 
 やっぱり恋の終わり、かな。
 夏から秋へと移る季節のイメージとしてはありふれているが、だからこそ誰もが何となく分かる感覚なのかもしれない。

2012/04/23  | trackback(0) | comment(0)


092:夕焼け より

category: ・ 2009 題詠選り好み
ほこらしくかつあほらしくそそりたつ夕焼けた顔を此方に向けて
やすまる (やすまる)

 どこぞの偉人の銅像だろうか。
 「ほこらしく」というからには、その地の人に一応は敬われて建ったものだろうが、「かつあほらしく」しかも「そそりたつ」とくれば、主体はさほど銅像となった偉人を敬っているとも思えず。
 あるいは、箱物行政の流れとして、たいした業績もないが歴史に名が残っている人物の銅像を造った自治体に対して、納税者として苦々しく思っている、とか。
 
 この歌を読んで真っ先に思い浮かんだのは上野の西郷像だった。
 薩摩出身でもないことだし、ましてや新選組!の後は薩長と岩倉具視が大嫌いになったので(おぃ^^;、「かつあほらしく」と言う部分で、そうそう!とうなづいたですよ。
 
 銅像でなくて建築物ということもあるなぁ。あ、銅像も建築物か。(←ばか丸出し
 建物といって「かつあほらしくそそりたつ」となると……都庁だな、やっぱり。この場合、「ほこらしく」というのは当時の鈴木知事の「自己満足」に他ならず。そしてやっぱり納税者としては、苦々しい限り。
 先日できたスカイツリーは、なんとなくこういう感情にはならないんだなぁ。

2012/04/23  | trackback(0) | comment(0)


091:旅 より

category: ・ 2010 題詠選り好み
小説のなかに出てくる旅びとの三度の飯のことが気になる
夏実麦太朗 (麦太朗の題詠短歌)

 ふふふ、そう、優れた作家は食べるシーンを適度に織り込むものです。しかも美味しそうなのです。
 鬼平なんて、食べ物で何冊も本が出ているくらいだし。
 最近読み返した「精霊の守り人」シリーズでは、まさに主人公バルサは「旅人」で、いろんな国のいろんな食べ物と食事風景が出てくる。戦うバルサは三度々々食べられるわけじゃないあたりも、ほどよいタイミングで食事にありつくという、作家の腕が偲ばれる物語。

 小説でもミステリーなんかだと、謎解きが楽しみな時は食事なんてどうでもいい、と私なぞは思ってしまうので、「気になる」場合と気にならない場合がある、のかなぁ。
 多分、人物像をどれだけ生身の人間として読みたいか、ということなんだと思う。
 この歌では、「旅びと」だから日常としての食卓から離れているわけで、時間の流れも非日常だとまたいろいろ想像してしまうもので、そういう意味でも「気になる」んじゃなかろうか。どの程度重要な人物かにもよるので一概には言えないが、この歌の「気になる」は、すごく感情移入して心配している、というよりは、どうしてんだろう?くらいの軽い疑問、という感じがする。

 で、「飯のことが気になる」といえば。
 いっときマイブームだった「24」など最たるもの^^;
 ジャック・バウアーはいつ食べてるんだ、というか、いつ寝てるんだ、いや、寝てないとしてもいつトイレ行ってんだ、というような話で大笑いした覚えがある。(だいたいあの携帯はなんで電池切れしないんだ!)
 まぁ、あのドラマは、話の先をドンドン知りたいジェットコースタードラマだから、ジャックがのんきに飯なんか食ってたら逆にヒンシュクものではある。(だから、カロリーメイトが提供CMだったのよねん)

 ……あ、またあさっての方向に……(そればっか^^;

2012/04/17  | trackback(0) | comment(2)


091:冬 より

category: ・ 2009 題詠選り好み
マネキンが秋冬物に衣替えしてバカンスももうすぐ終わる
五十嵐きよみ (NOMA-IGAオペラ日記)  (現在 111.31KV620日記

 ファッション界は季節先取り。
 ウィンドウを見ている主体はサマードレスなど着ているのかもしれない。そんな主体の目には、秋冬物のマネキンはまだまだ暑苦しく映っていることだろう。
 それでも、確実に夏は終わったと、マネキンの衣替えは告げている。
 「バカンスももうすぐ終わる」という響きの中に、往く夏を惜しむ寂しさとともに、あるいはひと夏の恋も終わりを告げるのかもしれない、そんな心情も感じられる。

 ヨーロッパの街並みが目に浮かぶ、そういう佇まいの歌。かっこいいなぁ。

2012/04/17  | trackback(0) | comment(0)


090:恐怖 より

category: ・ 2010 題詠選り好み
見なければないことになるわけじゃない 恐怖と名づけるほどでなくても
青野ことり (こ と り ご と )
 
 目をそらせばなくなってくれるなら、人生楽なもんである。
 世の中そんなに甘くない。
 
 「見なければないことになるわけじゃない」と言う時点で、見えてしまっているのだから、「見なければ」というのは無理な話。この心理は、「見なかったことにしたい」ということだ。もちろんないことにはならないけど、なるべく傷つかないようにする一種の防御本能というか。
 対人関係、金銭問題、健康問題、さまざまあるが、一度や二度は、こういう心理を経験しているもんです。
 
 と、ここまで書いてきて、もうひとつ思い浮かんじゃった……
 …………ワタクシの天敵、黒くて薄くて早くてヒゲが長くて……うえ〜〜〜〜!!!!!
 これも、「見なければないことになるわけじゃない」ところが悲しくも可笑しい。
 (この場合、私にとってはもはや恐怖ですが^^;)
 ……ただね、見えなければないことに「する」ことはできるのよ、個人の自由なのでね。(おぃ^^;
 だから、私のいるところには出て来るなっ!!
 
 ……なんか、あさっての方向に……どうもスミマセン^^;

追記 4/15 (黒いのにそれた後で、しかも作者ご本人のコメントを頂いた後でナンですが……^^;)

 「見なければないことになるわけじゃない」の読み方が浅かった。
 「ないことになる」なら見なかったことにしたいけど、そうはいかないからには、立ち向かわなければいけない。ここは、怖いけど逃げない、という主体の意思表明なのだ。

 ちゃんと咀嚼してから文章にしないといけませんね。反省。

2012/04/15  | trackback(0) | comment(2)


090:長 より

category: ・ 2009 題詠選り好み
あしひきの山鳥の尾の長々とはなす人ありあんたつちやぶる
みなと (海馬)

 あはは、「あんたつちやぶる」て!
 「はなす人」は、主体にとっておとなしく聞いていないとマズイ相手なんだろう。
 恩師、上司、近所のご隠居(え^^;、といった年長者もありうるが、なんたって「あんたつちやぶる」ですから^^;もうぜったい、奥様とか母上様とか姉上様とか叔母上様とか(おぃ^^;、とにかく角が出たらめんどくさい女性に決まっている。(近所のおばちゃんだともっとめんどくさい^^;)
 主体は当たり障りなく、うんうんと聞きながら、逃げ出す切れ目を探っているんだろう。
 可笑しいなぁ。
 
 枕詞で五七と消費してしまう豪勢さは、川柳人ならでは。もちろん、結句「あんたつちやぶる」の一語でたっぷりという腕があるからこそ、ですが。
 短歌って十分長いんだなぁ。

2012/04/15  | trackback(0) | comment(0)


089:泡 より

category: ・ 2010 題詠選り好み
グルグルと泡にまみれて廻ってる 戦い終えた今日のYシャツ
わだたかし (ファミレス短歌)

 今日も一日お疲れ様!
 ドリンク剤のCMみたいだが、「戦い終えた」シャツとそれを着ていた人には、そう言ってねぎらってあげたい。しかも、帰ってきてすぐ、ちゃんと洗濯するなんて偉いじゃないの。
 シャツを着ていた人は風呂入ってビールでも飲んでTV等見ている向こうで、洗濯機が一人ゴーゴー回っている。
 あるいは、ものすごく疲れて帰ってきて、洗濯機を回したのはいいが蓋も閉めずにぼーっと回る洗濯物を見ている、そんな放心状態とも読める。
 まぁ、今どきは全自動だろうし、寝ちゃったってちゃんと洗い終わるから大丈夫。
 ゆっくり休んで、また明日がんばってね。
 おやすみなさい。
 (まさか、すぐ干さないと明日着るものがないとか言わないでね^^;)

2012/04/01  | trackback(0) | comment(0)


089:テスト より

category: ・ 2009 題詠選り好み
ねえ先生 テストに出ないことばかり大事にしたいような空だね
こゆり (おかっぱ短歌)

 学生のうちからこの感性はすばらしい。
 
 本当は、「先生」が生徒にこういうことを示すべきなんだろうね。
 でも、この主体と並んで空を見ている先生なら大丈夫か。
 なにか悩んでいる主体を外に連れ出して、空を見てみろと促したのかも知れない。
 
 ま、先生としてはテストに出ることも大事にしてもらいたいかもしれんが、そこはそれ、大人としては、子供がこんなふうに感じる心を大事にしてあげないといけない。
 具体的に何なんてどうでもいい。
 空を見てそう感じる、そこが大事。

2012/04/01  | trackback(0) | comment(0)


088:マニキュア より

category: ・ 2010 題詠選り好み
マニキュアを乾かすために起きている 電話を待っているのではなく
tafots (1年で1000首をつくる)   (現在: 許せないなら許さなくていい

 同じ内容の歌がけっこうあったが、淡々としていて、でもミエミエの、そこが切ないこの歌を一首選に。
 
 「電話を待っているのではなく」とまで言ってしまえば、読む者には丸見え。
 まぁ、主体も分かっていて、自分を納得させるための言い訳というところか。
 
 来ない電話。
 とっくに乾いてしまったマニキュア。
 
 きっと、気が済むまで重ね塗りするんだろう。
 


2012/03/27  | trackback(0) | comment(2)


088:編 より

category: ・ 2009 題詠選り好み
ちょっと糸お借りしますというような指の動きだ かぎ針編みは
笹本奈緒 (ニダンカイサセツ)

 上手いこと言う。
 かぎ針で引っ掛けるさまがなるほどそんな感じ。
 しかも、編み方によっては、何度もすくったり、何度も同じ目のところをくぐったりするしねぇ。
 実はちょっとじゃないんだけど、コマネズミみたいにせわしない動きがいかにも「ちょっと」っぽい。
 棒針編みだと、「お借りします」というよりは、「ちょっとこっち来なさい」ってところかなぁ、なんて思いました。


2012/03/27  | trackback(0) | comment(0)


087:麗 より

category: ・ 2010 題詠選り好み
本名を思い出せない同窓会 お蝶夫人は竜崎麗香
振戸りく (夢のまた夢)  (現在: 夢のまた夢

 「エースをねらえ!」が青春ドンピシャの世代なら、この下の句に思わず釣られてしまう。
 ええ、お蘭は緑川蘭子です。(聞いてない
 
 主体は、「本名を思い出せない」相手を忘れているわけではない。顔を見れば浮かぶのはあだ名なのだ。
 この場合どうなんだろう?
 すごく仲良くて常にあだ名で呼んでいたとしても、すごく仲良しだったら名前が思い出せないってことはない、気がする。だから、あだ名だけ浮かんで本名が出てこないのは、あまり仲良しでもなく、しかもそのあだ名は見た目とか性格とか癖とか、当人にとってあまりうれしくないことにちなんだもの、じゃなかろうか。
 ン十年も経つと名前どころか顔を見ても、こんな人いたか?ということもありうるところ、ともかく顔とあだ名は一致するだけ、認知されていたということでましなのか?

 で、お蝶夫人である。
 話に花が咲く中、マンガの話になる。主体の周りではきっと、お蝶夫人と言って分からない人はいないのだ。そして多分、ほとんどがお蝶夫人の本名も即答できるのだろう。
 そんな話をしながら、この人なんて名前だったっけ?と考え続ける主体。
 
 「エースをねらえ!」の中でも、お蝶夫人はずっとお蝶夫人で、名前で呼ぶのは父親だけだったなぁ。
 待てよ。この歌の相手も、たとえばテニス部のキャプテンかなんかで、ついたあだ名が「お蝶夫人」なんじゃないのか? でもって一生懸命思い出そうとしても「お蝶夫人は竜崎麗香」。
 そんな読みだとちょっと笑える。
 どころか、下の句の効き目が全然違ってきて、かなり面白い。
 まぁ、自他共に「お蝶夫人」で恥ずかしくない高校生なんてそうそういないとは思うけど^^;
 ……いや、仲間内の冗談としてならありうるな。省略して「お蝶」になっちゃえば本人もあんまり恥ずかしくないかもしれん。

2012/03/25  | trackback(0) | comment(0)


087:気分 より

category: ・ 2009 題詠選り好み
からだごと空に溶け出したい気分 明日の朝は雨になるかも
新田瑛 (新田瑛のブログ2)

 上の句だけ読むと、ウキウキ気分なのかと思った。
 が、「雨になるかも」という結句は、涙を思わせる。わんわん泣きたい気分を「空に溶け出したい」と言っているんだろうか。つまり、自分が泣きながら空に溶け出したら、明日は雨になる。
 
 あるいは、一字空きはきっぱり切れと考えて。
 主体は、空に溶け出したいほどフワフワ幸せな気分で、それは少なくともきれいに晴れた空でないといやで、明日の予報としては雨なので、溶け出すなら今日、という。
 
 うーん……
 やっぱり、明日の雨は主体が溶け出した結果、というふうに読みたい。
 つか、溶け出しませんけど^^;
 今とっても泣きたい気分だから、明日は雨(になってほしい)、ということかな。
 
 ゆっるい鑑賞でどうもスミマセン^^;

2012/03/25  | trackback(0) | comment(0)


086:水たまり より

category: ・ 2010 題詠選り好み
にわか雨上がりし道の水たまり 歩みにつれて雲の流れる
西中眞二郎 (しなやかに、したたかに、無責任に・・・西中眞二郎雑記帳)

 アスファルトの道路ばかりになって水たまりもなかなか出来なくなったが、まぁそこは想像をたくましくして。
 まだまだ明るいうちに雨が上がって、水たまりに空と雲が映る。「歩みにつれて雲の流れる」のは足元に映る景色だ。
 こんな時って辺りがものすごく明るく見えるんだよね。水面が空を映す鏡になっているんだから当然か。雨上がりのあとの青空と雲の混ざった空がとても明るく映る。
 
 イメージがくっきり浮かぶんだから、昔見たはずだよなぁ、と思いつつ、短歌を作る段になると一向に浮かんでこないのが情けない。まぁ、浮かんだとしても、この歌のように衒いなくさらりと歌ってはじめて成功する質のものだから、そう簡単には作れません。

2012/03/25  | trackback(0) | comment(0)


086:符 より

category: ・ 2009 題詠選り好み
感嘆符に満ちた青空スキップでどんどん増えていく四分音符
kei (シプレノート)

 春を待ち焦がれている心理も手伝って、明るく弾むようなこの歌を一首選に。
 
 この空は春というより初夏から夏頃っぽい。
 晴れているだけでなく光り輝いている感じがする。感嘆符が満ちている青空、なんてすてき。そんな空を見ていたらスキップしたくもなるというもの。そしてスキップするたびどんどん増えていく四分音符。
 音楽を奏でるとかそんなシャレたものじゃなくて、つい鼻歌歌っちゃう、そんなウキウキ感がとても好き。

2012/03/25  | trackback(0) | comment(0)


085:訛 より

category: ・ 2010 題詠選り好み
活字にても訛は消せず青森の林檎の枝を揺さぶりやまず
野州 (易熱易冷〜ねっしやすくさめやすく、短歌編)

 寺山修司へのオマージュとして読んだ。

 林檎の木ゆさぶりやまず逢いたきとき   寺山修司


 寺山の俳句はどこかしら「寺山!」と思う。。それこそが個性なんだろう。
 作者は、その隠せない個性を、やはり隠せなかった青森訛りに被せて、活字になっても寺山の俳句(或いは短歌)には青森訛り(=寺山!)が感じられる、と言っているのだと思う。
 
 俳句でも短歌でも、寺山修司がきっかけで始めた人は多い。特に、短歌をやっていて寺山の短歌をひとつも知らない人っていない気がする。それがずっと続いている。すごい人だ。
 作者も、少なからず寺山にインスパイアされたのではないだろうか。
 
 (ワタクシは、俳句より短歌より先に競馬でした、テヘ^^;) 

2012/03/17  | trackback(0) | comment(0)


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何しろ周回遅れの鑑賞ですので、古いエントリでもご遠慮なく。

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